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あちら側

このところ、駅と直結している地下街をよく通る。

 

朝のラッシュ時で、

数店のカフェ以外

シャッターが降りている。

 

カフェでコーヒーを飲みながら

パソコンを開くビジネスマンを見ると、

時間の流れるスピードが違うのだと思う。

 

先を急ぐ人の流れに

身を任せるこちら側。

 

ガラス1枚隔てられた

あちら側は、リズムが違う。

 

朝、30分早く家を出て

たまには私もあちら側の人になりたい。

 

纏めたい原稿とか、

サラッと読める小説とか。

そんな時間に充てるのだ。

 

30分なら何とかなりそうだ。

 

そう思って、前日の夜から、

翌朝のタイムスケジュールを

頭でシミュレーションする。

 

そうだ、

お弁当の焼き魚は夜の内に

焼いていてもいいんじゃないか。

 

唐揚げの座布団、

キャベツの千切りは

夜の内に炒めておこう。

 

息子の保温ジャー弁当箱は、

温かさを満喫できるよう

なるべく遅い時間に

仕上げようと思っていたけれど、

 

思い切って、1時間繰り上げてしまおう。

 

翌日、着る洋服も決めた。

 

お天気が心配なので、

折り畳み傘も鞄に入れた。

 

5:15に起床のところ、

5:00にした。

 

様々な調節のもと

あちら側が近づく。

 

翌朝、出だしは調子が

良かったのだけれど、

途中から、いつもの時間配分と

ごっちゃになって、

 

余裕があるような気になり、

洗濯機を回し出し、

 

最後の最後に、メイク時間に巻き…が入る。

マユゲガキマラナイ。汗。

 

オカシイ。

こんなはずじゃなかったのに。

結局、いつもの時間になりそう。

もう、いっか。と諦め掛け、

 

いや、まだ間に合いそうだ。と、

奮い立たせて、家を飛び出す。

 

予定より、15分遅れたが

めでたく、あちら側となる。拍手。

 

電車を2台見送る余裕はあるが、

店内でコーヒーを飲むには

慌ただしい時間。

 

400円超えのコーヒーは、

1時間は粘りたいところだけど、

15分くらいしかない。

 

そんな迷いは天に預け、

昨夜からの自分を讃えたくて

店内でいただく。

 

あちら側とこちら側の

狭間くらいだろうか。

 

頭の片隅で、

時間ばかりが気になり

カップと時計を

交互に見つめる。

 

まだまだ、だ。

 

 

 

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